少女まんが家インタビュー

ひかわ きょうこ インタビュー vol.2

ひかわ きょうこ インタビュー vol.21 2

少女まんが家インタビュー 第4回 ひかわきょうこ

最初からうまくいくなんてことは絶対にない

『お伽もよう綾にしき ふたたび』

こだわりというのは、自分にとって大事な部分ですから、手放すというのはなかなか難しいことですよね。
ひかわ でも、いったんこだわることは必要なんですよ。こだわるだけこだわってから、手放すんです。最初からぱっと行くべき方向に行くことはできない。こだわって、行き詰まって、という段階を踏まなければ、そこには行けない。最初からうまくいくことなんて絶対にないんです。必ず苦労をしなくちゃいけないんですよね。
長くまんがを描いていらしても、いまだにそうですか。
ひかわ いやあ今ね、すごくネームに悩んでるんですよ(笑)。まだ正しい方向どころか、何にこだわっていたのか、何にこだわらなくていいのかさえはっきりしないのでつらいです。

『お伽もよう綾にしき ふたたび』③巻、P.61より。

今まさにおつらい時だったんですね……。
ひかわ でもこれって、まんがだけじゃなくて人生にもあることですよね。「こうでなきゃいけない」と思いこんで追い詰められることってありませんか。
はい、よくあります。
ひかわ 私はそういうときには一度「待てよ、今このことにすごくこだわってるけど、もしかしたら、そうでなくてもいいのかもしれないぞ」と考えてみることをやっています。『お伽もよう綾にしき』では現八郎が「強くならなくてはいけない」と思い込んで、結局死んでしまいましたが。別に自分は弱くてもいいじゃないか、と思えていたら道は拓けたのに、強くならなくてはと思いこんで、破たんしてしまった。ああ、この人はそうだったんだなと思いながら描いてました。

観念的ではダメ。エンタメとして、おもしろく

お話を伺っていると、本当にご自分が考えて来たことと、経験してきたことがまんがと直結しているのを感じます。
ひかわ ひとつひとつの経験って無駄じゃないんだなって思います。作品に入れようと思うわけではなくて思わぬ形でそれが出てくるんですけどね。あくまで、エンターテイメントとしておもしろく描ければいいな、というところから始まってはいるんですよ。
なるほど、「エンタメ」だから「説教臭い」みたいに感じることが一切ないんですね。
ひかわ 上から目線になってしまっては楽しく読めないですからね。
非常に抒情的なのに、読み口はあくまでもエンタメ、というのがすごいです。観念的な方向に行きすぎるな、と思ったらぐいっと戻すようなこともあるんですか。
ひかわ ありますね。読者には、喜んでほしいじゃないですか。そのためには観念的な方向に行ったら絶対にだめなんです。あくまで、読者に喜んでもらう、楽しんでもらうということが大前提。この前、「ふなっしー」がテレビに出ていて、アナウンサーに「番組のキャラクターを売るためにはどうしたらいいですか」と聞かれていたんです。そしたらね、「みんなに喜んでもらおう、っていう心があれば人気が出るんじゃないですかね」みたいに答えていて。いいこと言いますよねえ。あの人……って言ったらおかしいですけど(笑)、ふなっしーは結構考えていますよね。極意やな、と思った。
喜んでもらおう、と思って描けば、おもしろくなる。
ひかわ まあ、こちらの実力にも限界があるので、なかなか難しいんですが。

ネームでも絵をしっかり描くことで、世界観がわかる

読み手としては、ひかわ先生は本当にさまざまな題材で自在にエンタメ作品を書いていらっしゃる印象ですが。
ひかわ いえいえ! ほかの人ができることができないから、まさに、自分ができることをできる範囲でやっているだけで。早いペースではどうしても描けないので、作品数も少ないんですよね……。
デビューから30年以上というと作品数自体は少なめでいらっしゃいますが、先ほどおっしゃったように、ネームに詰まったら戻って……というのを繰り返して描いていたら、確かに量は描けませんね。
ひかわ 描けないですねえ。
アシスタントさんもいらっしゃらないんですよね。
ひかわ いません。全部ひとりで描いています。ひとりだから時間はかかるんですけど、結局ね、マイペースでやれたほうが私にはいいんですよ。だから、手を抜いて描いているでしょう。
いいえ! さきほどネームを拝見しましたが、絵がすでにしっかりと入っていて驚きました。人物だけでなくて背景もかなりしっかりと描きこまれるんですね。
ひかわ ここまではっきり描かないと、自分でイメージがつかめないんですよ。ネームにする前に、もっとラフなものも描くんですけど、せいぜい3枚くらいまでしか進まないです。しっかり絵が入っていないと、世界観がわからなくなってくる。
頭の中に絵があって、それを紙に落とす感じなんですか?
ひかわ そうですね。それをはっきり描いておかないと、すぐに消えてしまうので。キャラクターを「まるちょん」で描いてもわかる、という作家さんもいると思うんですけど、私はそれができないんですよね……。

ひかわ先生の下絵、ネーム大公開!!

お話に出ていた、ひかわ先生のネームと下絵を特別に公開です!

ネーム
躍動感あるデッサン、構図がネームの時からしっかり描かれています。
下絵
ペン入れ前の下絵の状態。この段階では、さらに整ったものに。
完成
そして原稿に。背景もトーンも効果も全て、おひとりで描かれています。
お伽もよう綾にしき
不思議な力を持った鈴音の父親代わり・新九郎は、形見の笛を残し行方知れずに。10年後、笛から現れたのは、新九郎に瓜二つのもののけ「おじゃる様」! 夫婦になった鈴音と新九郎の冒険の日々を描いた続編『お伽もよう綾にしき ふたたび』が現在『メロディ』にて連載中。

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ひかわきょうこインタビューVol.3は、2014年3月7日(金)配信です。